DAY13「KPIをどのように設定しどの指標を追跡するべきか」

KPI(重要業績評価指標)は、企業が設定したKSG(重要成功目標)を達成するために進捗を測るための重要なツールです。

MIX会計では、売上よりも「付加価値」を重視します。

今回は、KPIを「付加価値」で設定する理由を解説し、どのように最適なKPIを選定し、追跡すべきかについて掘り下げていきます。

1. KPIは「率」ではなく「付加価値額」と「個数」で設定すべき理由

KPIを「率」で設定すると、分母と分子の組み合わせ方が無数にあり、管理が複雑になりがちですよね。

たとえば、利益率や成長率といった指標は、分母や分子が変動すると、全体の進捗状況を正確に把握しづらくなります。

そのため、MIX会計では、「付加価値額」や「個数」でKPIを設定することを推奨しています。

・具体性と測定の明確さ

「付加価値額」や「個数」は具体的な数値として測定でき、理解しやすいです。特に、ビジネス目標が数値として具体化されるため、誰が見ても達成度がはっきりわかります。

・管理のしやすさ

「付加価値額」や「個数」は、複数の変数に依存せず、1つの数値を追いかけるだけで済みます。そのため、進捗管理や目標達成のためのアクションが明確で、複雑な計算を避けられます。

・行動に直結する

「率」よりも「付加価値額」や「個数」は、具体的な行動や施策に結びつきやすいです。たとえば、「100個販売して合計付加価値を50万円にする」といった具体的な行動がKPIとして設定できるため、経営者やチームメンバーにとっても分かりやすく、目標達成に向けた実行可能な計画が立てやすくなります。

2. KPIの設定ステップ

KPIを効果的に設定するための手順は次の通りです。

ステップ 1: KSGを明確にする

KSG(重要成功目標)とは、企業が最終的に達成したい成果や状態を示します。MIX会計では、KSGは「付加価値をいかに最大化するか」という視点から設定されます。

例: 「顧客のニーズに応じた高付加価値商品を提供し、長期的な信頼関係を築く」

ステップ 2: KPIを選定する

KSGを達成するために、進捗を測定するためのKPIを「付加価値額」や「個数」で設定します。KPIは、KSGを達成するための主要な指標となり、企業の行動を具体的に定義します。

例: 「月間付加価値を500万円に増やす」「商品1個あたりの平均付加価値を1万円にする」

ステップ 3: KPIの進捗をモニタリングする

KPIの進捗状況を定期的にモニタリングし、どれだけ目標に近づいているかを測定します。KPIが「付加価値額」や「個数」であれば、数値の増減が直接的に目標達成に結びつくため、モニタリングが簡単です。

ステップ 4: KPIの進捗に応じてアクションを修正する

KPIの進捗が思わしくない場合は、その原因を分析し、戦略や施策を修正します。具体的な数値(付加価値額や個数)をもとに、どこに問題があるのかを迅速に特定できます。

3. KPIの追跡に適した指標

MIX会計におけるKPIは、「付加価値額」や「個数」を基準に設定するのが最も効果的です。以下にいくつかの例を紹介します。

KPI例

・付加価値額

目標: 「月間付加価値を500万円に増やす」

理由: 付加価値は企業の利益を最も直接的に反映するため、全社的な成長の指標となります。

・1商品あたりの付加価値単価

目標: 「商品1個あたりの付加価値単価を1万円に増やす」

理由: 付加価値単価の向上は、企業の収益性を高めるため、長期的な成長に寄与します。

・販売数量

目標: 「月間販売数量を500個に増やす」

理由: 販売数量を増やすことにより、付加価値の総額が増加し、企業全体の収益力が向上します。

・事業部ごとの付加価値合計

目標: 「各事業部の月間付加価値を100万円以上にする」

理由: 各事業部の貢献度を数値化し、全社的な付加価値向上に繋げるため。

4. 「率」でKPIを設定する問題点

「率」をKPIとして設定すると、以下の問題が発生することが多いです。

・複雑さ

「率」は、分子と分母の変動に左右されやすいため、進捗の正確な把握が難しくなります。

たとえば、「付加価値率」を設定した場合、販売単価や原価が変動すると、進捗を判断するのが難しくなります。

・具体性に欠ける

「率」は抽象的で、現場の具体的な行動に結びつきにくいです。

たとえば、「付加価値率を10%にする」という目標は、どのようにして達成するかが曖昧になります。

・誤解を招きやすい

率の変動は、分母や分子の影響を受けやすいため、目標達成が正確に把握できず、チーム内での認識が分かれることもあります。

・ズルした方が得する余地が生じる

たとえば、「来店者数に対する購入率」と設定すると、購入者数が変わらない場合、来店者数を減らした方が数値が良くなります。

そのため、このままいけばKPIを達成する状況だとすると、本来はポジティブな要素である来店数を増やさない方が現場は高い評価が得られてしまうことになり、来店数を増やさない運用をした方が合理的になる、という矛盾が生じるからです。

5. KPIの管理方法

KPIは、定期的に進捗を確認し、目標に向けた進捗状況を常に把握することが重要です。

1. 定期的なモニタリング

毎週、毎月などの周期でKPIをモニタリングし、どれだけ目標に近づいているかを確認します。これは進捗の早期発見や改善を可能にします。

2. 可視化ツールを活用する

ダッシュボードやグラフなどを使用して、KPIの進捗状況を視覚的に表示することで、チーム全体が一目で進捗を把握できるようにします。

まとめ

KPIを「付加価値額」や「個数」で設定することにより、進捗の測定がシンプルになり、目標達成に向けた行動が明確になります。

「率」での設定は複雑さを増し、誤解を招きやすいため、避けた方が良い場合が多いです。

具体的で測定可能なKPIを設定し、KSG(成功目標)に向けた確実な進捗を実現しましょう。

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